「健康のために歩きましょう」。
よく耳にする言葉ですね。
日々の習慣として、歩くことを大切にされている方も多いと思いますが、歩くという動きには、見落とされやすい一面があります。
それは、歩くという動きは多少バランスが崩れていても、“とりあえず歩けてしまう”ことが多いということです。
見落とされやすい歩き方のクセ

バランスが崩れていれば歩けないというのなら、かえって分かりやすいのかもしれません。
ですが、実際には、多くの方がそのまま歩けてしまいます。
だからこそ、自分の良くないクセに気づかないまま年月が過ぎていきます。
たとえば、
- かかとを擦るように歩いている
- かかとを強く地面に押し当てている
- 靴底はいつも外側ばかりがすり減る
- ひざが曲がって背中も丸まりがちになる
こうした状態があっても、日常の中では気にせず歩けてしまうものです。
ただ、その歩き方を続けるうちに、身体の一部に負担がかかってしまったり、その動きがクセとして染みつき、スポーツの場面で思うように動けない、そんな原因になることもあります。
「何ヶ月か歩いてみたら、かえってひざに違和感が出てきた」。
そんな声を耳にするのも、こうした背景と無関係ではないのかもしれません。
着地の位置でも、進み方が変わる

歩きの中で、最初に地面につくのがかかとなのか、それとも、くるぶしの真下あたりなのか。
この違いは、思いのほか大きいものです。
かかとの骨は踵骨(しょうこつ)と呼ばれ、丸みを帯びた形をしています。
一般にかかとと聞いて思い浮かべるのは、この踵骨(しょうこつ)の後ろ側の部分です。
後ろ側で地面に入ると、後ろへ転がろうとする力が働きます。

前に進みたいのに、身体が後ろへ引き戻されるような状態になるので、前に進みにくくなります。
一方、くるぶしの真下は、位置でいうと少し前にあたります。

そちらで地面に着くと、かかとの丸みをうまく生かしながら、前へ転がるような力が生まれやすく、スムーズな歩き方につながりやすくなります。
同じ一歩でも、最初にどこで着地するかで、身体の進み方はけっこう変わってきます。
骨盤の位置を、少し上に

では、かかとから入りやすい歩き方には、どのようなことが関わっているのでしょうか。
いくつかの可能性が考えられますが、一つの見方として、骨盤の位置が地面の方へ下がってしまっている、という傾向があります。

軸になる脚が曲がり、腰の位置が下がったまま動くことで、すり足になったり、かかとから強くついたりしやすくなります。
逆に、軸脚がきちんと伸び、お尻や腰の位置をできるだけ上に保てると、歩いているとき腰の位置も上がってきます。
立った姿勢で、腰をほんの少し高く設定してみる。
それだけでも、すり足やかかと接地の感覚が変わってくる方は少なくありません。
肩の向きでも進み方が変わる

歩き方を見直したいと思ったとき、多くの方は脚そのものに意識を向けますが、動きの観点から見ると、脚に入る前に整えておきたいところがいくつかあるのです。
意外に思われるかもしれませんが、歩き方には肩の使い方も関わってきます。
歩くのは脚だ、という感覚が自然なぶん、肩で脚の動きが変わるという発想にはなりにくいものです。
分かりやすいのは、立った姿勢で手のひらの向きを変えてみることです。

手のひらを前に向けたときと、後ろに向けたときとで、足の裏の体重のかかる位置が前後に動くのを感じられると思います。
手のひらが前を向くと重心はかかと寄りに、後ろを向くと前寄りになりやすい、という傾向があります。
実際に手のひらを前に向けたまま歩く方はまずいません。
ですが、動きの中で手のひらが前に向くシーンがあったり、手の平は内側を向いていても、ヒジが内へ強く絞られ、締めつけられたような姿勢になっている方は少なくありません。
本来は、手のひらが自然に後ろを向き、ヒジが軽く外を向くくらいの肩の向きでいられると、身体は前へ傾き、前に移動しやすくなります。
こういったことも、かかと寄りの接地や擦り気味の歩きをやわらげていく一つの手がかりになります。
小さな違いですが、歩きの感覚に響いてくるところです。
一足飛びには変わらない、でも…

何十年も続けてきた歩き方が、そう簡単に変わるのか。
正直なところ、簡単ではありません。
ただ、少し意識をもって歩くことを続けたり、身体のバランスを整えるようなトレーニング等に取り組み続ける中で、少しずつ変わりやすくなってくる部分もあると思います。
「健康のために歩く」。
その言葉に、今回一つだけ足したい言葉があります。
健康のために、良いバランスで歩く。
脚だけを見るのではなく、接地の位置、骨盤の高さ、肩の向き。
その順番に目を向けたとき、いつもの一歩が、少し違って感じられるかもしれません。
▼今回の内容を解説した動画はこちら
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